一句鑑賞:冬の虹友と呼ぶには遠き人 / 津川絵理子
冬の虹友と呼ぶには遠き人 津川絵理子
所収:『和音』文學の森(2006年)
本来「虹」は夏の季語だが、ほかに「春の虹」「秋の虹」が存在する。そして、掲句の「冬の虹」も。
掲句を初めて読んだときは、中七下五の「友と呼ぶには遠き人」という言葉にばかり注目していたが、季語もこれ以外にはありえないと今あらためて思う。
しかし、まずは「友と呼ぶには遠き人」だ。
解釈はいろいろとできる。もともとは友人だったが、何か理由があって疎遠となってしまった人。とくに理由がなくても、なんとなく距離ができてしまうこともあるだろう。
もしくは、はっきりと友人と呼んでいいのか、迷ってしまうような微妙な関係性だってある。
どちらにしても、その「遠さ」は、物理的というより心理的なものであることはきっと同じだ。
冬の冷えきった大気のなか、曇天のつかの間にみえる虹。どの季節よりも、ひときわその存在は遠く、美しく感じられるだろう。
一読、自分から遠くなってしまった人は寂しい存在のように思えてしまうが、「冬の虹」からはその関係性への肯定感、対象を敬う気持ちもどこか感じられる。
もちろん寂しくないわけではないが、どうしようもないことだってある。たくさんある。そんなあきらめにも似た気持ちにふかく共鳴し、掲句はわたしにとって忘れられない一句となった。
絵理子先生からの選を受けたい一心で、俳句結社「南風」に所属した。
初めて投句した2021年「南風」10月号には、掲句に触発されてできた句(あまりにも影響を受けすぎているともいう)が掲載されている。
〈 桜桃や友になれさうだつた人 ばんかおり 〉
❇︎同じ「南風」所属の句友である、五月ふみさん企画の「好きな俳句の一句鑑賞 Advent Calendar 2024」に参加させていただきました。ふみさん、ありがとうございました!
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